呼吸法1



 呼吸。それは、人間にとっては普段から特に注意を払わなくても、無意識に
行われるため、何かと見過ごされやすいものです。しかし、食事などは多少
食べる時間が空いても何とかなるものですが、呼吸だけは、ものの5分も止まって
いれば、即座に生命が危うくなるという事からも解るように、生命活動を営む上
では最優先事項の一つなのです。

 そしてそれは「人間」という存在を真の意味で知るための自己探求の訓練法
において一番最初に行うべき練習法であり、最も重要な練習法なのです。

 ここでは、その呼吸法を行う時の基礎的な知識から四拍呼吸、数息観、腹式呼吸の
実際の3つの呼吸法について述べていく事にします。




・基礎的知識。

 まず、四拍呼吸が最初の呼吸の修行になります。学び手はこの呼吸法をまずは一日5分でも、
「毎日」継続して行なう事を習慣づけてください。また、他に暇な時間が出来たりしたら、
その間に四拍呼吸を練習するのも良い手でしょう。通勤・通学時間、昼の休憩タイム、アフター5
の空き時間など、見つけようとすれば、この訓練のための空き時間は結構、あったりするものです。

 数息観については、夜、寝る前に一人で行うのが良いでしょう。この呼吸法を行うと、眠気を
及ぼす事が多いので、もし眠くなった時は現段階の修行ではそのまま寝てください。呼吸を行う
際の姿勢については、現段階では特に無いですが、あぐらや正座などで行う場合は、背筋を
しっかりと伸ばす事。背筋が曲がっていると、体に負担をかけます。

 これらの呼吸法の練習を行う際は、出来るだけ理想としては、一人で落ち着けるところで、空気の
奇麗な環境で行うのが良いのですが、あまりその辺を厳しくすると、練習自体が出来なくなって
しまうので、自分で応用を考えて、ある程度適当なところでも練習するようにして下さい。
ただ、あまりにも空気が汚いところや人が大勢いるところは、避けた方が無難でしょう。

 一応、自分の部屋等で呼吸法を行う際に気をつけるポイントを挙げておきます。

・部屋の温度を適当にする。
 多少、暖かいと感じるくらいが適当です。そのためには、冷暖房の器具があれば
 それを使うのが良いと思いますが、ただし、暖房器具でも石油を使うものは空気が
 悪くなってしまうので、やめた方が良いでしょう。また、冷暖房及び扇風機などの
 風は直接、体に当てないようにしてください

・空気は適度に乾燥させておく。あんまり湿気が多いと体の制御がうまく行かないし
 生体的エネルギーが落ちるので雨の日などで湿気が多い日は、冷房器具などでドライ
 運転が出来るものがあれば、それを使うのが良いでしょう。
 あと、あんまり乾燥させ過ぎた状態で呼吸法を練習すると喉を傷めるので、冬の乾燥
 した日は加湿器を使うなどして調節して下さい。

・部屋の空気があんまり汚い場合は、空気清浄器を使うのも良いと思います。一般的な
 空気清浄器は大きく2種類に別れ、ファンを使い、フィルターで塵や埃を取るものと、
 静電気を使い紙に埃を吸い付けて取るものとあります。この2つがセットになったもの
 も売っているので、金銭的に余裕のある方はそちらを買うのがベストでしょう。
 どれか、一つの方式だけのを買う場合は、どちらも一長一短があるので次の事柄を参考に
 して、自分の部屋にあうものを選んでください。

・ファン式は、部屋の空気が汚い場合、それを速やかに奇麗にする働きがある。しかし、
 モーターの音がうるさいので、呼吸法を行うときには意識の集中の邪魔になる事が多い。

・静電気式は、音がほとんどしないし、電気代もほとんどかからないのでずっとつけて
 おく事が出来る。ただ、あまり早く空気を奇麗には出来ないので、部屋の空気がかなり
 汚れているときは役に立たないしイオンを発生すると言う事で、一種独特な匂いを
 発生するのでそれが嫌な人には向いていない。ただ、最近マイナスイオンが流行って
 きているので、そういった事柄に興味がある方は向いてるかもしれない。
 あと、呼吸法全般的に付け加えておく注意ポイントとしては、
・一般的に普通の呼吸法は鼻で行う事が多いものです。
 しかし、鼻に病気のあって鼻で呼吸の出来ない人もいるでしょう。突発的な病気ならば、
 その病気が治ってから修行を行うべきですが、もし鼻に慢性的な病気のある人は、次善
 の策として、口から細く息を呼吸して、鼻の代わりにする方法もあります。
 鼻が悪いからといって、呼吸法を全然練習しないよりはそっちの方がましですが、しかし、
 なるべくならば、鼻の治療をして、鼻で呼吸法を出来るようにするように頑張ってください。
 鼻で呼吸をするのにも、特別な意味があるのです。
・一般的に通常の呼吸法は健康な人を対象に作られています。もし、これらの呼吸法を行おう
 という人で、呼吸器系や心臓などに疾患のある人は十分注意して練習を行うようにしてください。

・上記のような特に身体にこれといった疾患の無い人でも、もし呼吸法を行っている際に、
 身体に特別な異常を感じた場合はすぐに練習を中止して、安静にし、様子を見るように
 してください。







四拍呼吸



1 肺の中の空気を出してしまい 4つ数える
2 息を鼻から吸いながら 4つ数える
3 息を止めて 4つ数える
4 息を鼻から吐きながら 4つ数える
5 息を吐いたら、4つ数える
6 2へ戻る。



・補足事項・



 ヘルメス学系の練習では一番最初に来る方法です。流派によっては、上の1番と3番で
 数える数字を2つにしている流派もあります。各自、自分の好きな方を選んで練習してください。
 数にはその流派によっていろいろな意味を付けていたりして、戸惑うことがあるかもしれませんが、
 根本的にはこの呼吸は、リズミカルに、そして深い呼吸が自然に行えるのを目的としています。

 練習のポイントとしては、よく間違える事ですが、まず1や5で肺があまり苦しくなるまで
 空気を出し切ったりしない事です。ある程度自分が納得するくらいまで出したら、次へ
 移るようにしましょう。また、息とともに数える数字は各自、自分が苦しくならない程度の
 長さに調節してください。

 また、初心者は息を止める際に間違いやすいのですが喉や肺で無理矢理止めたりしないように
 気をつけてください。息を止める際はふっと息を止めるような感じで、どこにも力をかけない
 ようにするのがベストです。

 よく「訓練法」や修行と聞くと、苦痛を耐えて行うものこそが価値があると誤解しやすいところが
 あります。しかし、神秘行の訓練法ではまず第一に「リラックス」を基本とします。
 その理由は、不必要な筋肉の緊張は気血の流れを阻害してしまう事からきています。ですから、
 この呼吸法はゆったりと楽に行うのを心がけながら練習してください。
 他に注意する事としては、まず、この呼吸を行う際は慣れるまでは呼吸を行うのに胸が少し苦しく
 なったりする事があると思います。その場合はあくまでも無理をせずに少し休んで、肺が楽に
 なってから再び練習を行うようにしてください。

 また、この呼吸法に馴れてきたら、その際は呼吸を行うと共に自分自身の内なる意識の変化にも
 気をつけるようにしてください。この呼吸法を行う前と、呼吸法を行いだしてから数分立って
 からの意識を比べると、意識がより微妙で静謐になってくるのが解るでしょう。この微妙な意識の
 変化を大切によく記憶してください。






数息観




 1 体をリラックスさせた状態にする。
   目を閉じる。息を出してしまう。

 2 息をゆったりと深く鼻から吸い込む。
   そして、深く鼻から吐いていく。

 3 2を一つとして、吸う息、吐く息に意識をかけながら、
   心の中でひとつ、2つ、3つ・・・という様に、呼吸をする度に
   数えていき、単純にそれを何回も繰り返す。



・補足事項・



 この呼吸法はインドではアナパーナと言って、遠い昔から実行されていたとても有効な
呼吸法の一つです。最初は吸って吐くを一つとして、それを100呼吸くらい行ってみて
ください。練習が進み日数がたつにつれ、200、500、1000と段階を踏みながら
数を増やしていき、最終的には、延々と時間の許す限り行うようにして下さい。
 この際、注意する事としては、息の流れと数を数える事にのみ注意を払う事を考え、
もし雑念が思い浮かんだりしてお、そちらに意識を移さず息の数を数える事にのみ注意を
払い続けてください。

 この呼吸をしっかりと練習していけば、そのうちに呼吸はだんだん静かになり、最初は
聞こえていた呼吸の音も聞こえなくなって、肺で呼吸しているというよりも、丹田でわずかに
呼吸しているような感じになります。
 その段階に至っても尚さらにまして練習していけば、やがて意識に微妙な変化が訪れるのが
解るようになるでしょう。私の場合は、体の中に少し暖かく気持の良い霧のような気が満ち、
内臓にその気が満ちるのが解り、精神や思考が澄み渡る様な感じを受け、やがて、自分と回りの
空間の境界が解らなくなる様な、とても恍惚とした状態となるのを経験しました。
 こういった訓練法を始めて最初の頃は、こんな単純な方法にいったい何の意味があるのか、
疑問に思いがちですが、こういった経験を経れば、人は呼吸と自分の物質的肉体が
いかに密接な関係があるかが肌で理解出来、この訓練にどんな意味があるのかが理解できるように
なると思います。


 この数息観では、まだ「数を数える」という「自分の意識」が残っていますが、この呼吸法を
長く続けていって他の雑念が思い浮かばなくなり、単純に数と呼吸に関わる意識だけが残ってる
まで、意識の制御が上達したら、次は腹式呼吸のみを行うようしてみて下さい。
その際は、ただ自分の中に入り、出て行く呼吸の流れだけに意識をかけるようになります。
 あと、この呼吸を行う際にも、四拍呼吸と同様に出来るだけ自分の意識をよく感じる様にして
ください。ある程度、この呼吸法に上達してくると私の場合は自分の意識が「カチッ」と変わる
ような体験を得ましたが、他の学び手もこれに似た意識の変化が経験されると思います。もちろん、
人によっては違った感覚になるかも知れません。要は自分の普段との意識の変化が理解できれば
良い事です。

 この意識の変化が起こった後は、回りの気配が一種独特のとても静謐なものに感じられ、人間が、
普段感じている意識がとても荒いものであるという事がよく解ると思います。






腹式呼吸




 1 体をリラックスさせた状態にする。
   目を閉じる。息を出してしまう。

 2 ゆっくりと深く息を吸い込みながら、下腹を膨らませていく。

 3 息を吸いおわったら、ゆっくりと息を吐きながら、
   下腹を戻していく。

 4 2から3をひたすら続けていく。



・補足事項・



 一般的に人間は日常の生活では、浅い胸式呼吸を行っている事が多いものです。しかし、
そういった呼吸は肺のごく一部しか使っておらず、生命体にとって、効率の悪いものなのです。
しかし、腹式呼吸を行うと、肺の全体を使う事になり、より多くのガス交換が行われ、
心身の活性化にも繋がります。

 最初は腹式呼吸を行う際は、意識で腹を膨らます事になりますがこの呼吸法を長く行い、
無意識に刻みこまれてくると、意識を変化させ瞑想状態になるだけで勝手に腹式呼吸になる
と思います。
 その様な状態に入れば、特に何も考えるでもなく、ただ吸う息・吐く息に意識をかけ、延々と
呼吸を行っていけるようになります。この呼吸により、自分の意識が調和したとき、学び手は
この世界全てを取り巻き構成している大洋の様な、たゆたいし根元の意識の流れを、自身の
意識で感じ取る事が出来るようになるでしょう。




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