概要
生命の樹
西欧神秘伝統は、その教義の中心に一つの図を据える。それこそが、「生命の樹(Tree of Life)」、オッツ・キィムと呼ばれるものである。その図形は主に10個の球体、セフィロトと呼ばれるものとそれらを繋ぐ道、パス(小径)と呼ばれるものから成り立っている。下にその図を掲げる。
図1
セフィロト
この図はカバラと呼ばれる神秘的伝統に長年に渡って受け継がれてきたものである。上の図を見て、球体が11個あると思われるかもしれないが、この点については後に詳しく説明する。ここでは、番号を打ってある10個の球体のみについて考えて欲しい。この生命の樹と呼ばれる図は単純ながらもその内にカバラの奥義が示されており、とても重要なものとされている。この図の10のセフィロトと呼ばれる球体は、この世界の実質的原理、もしくは「力」の容器の表現、宇宙の「意識」が自身を表現する絶対的概念を象徴するとされる。因みにこの「セフィロト」という呼び名は複数形であり、各球体一つ一つは「セフィラ」と呼ばれる。以下に、この各セフィラと、その前段階の否定的存在の簡単な説明を表にして示す。
| 数 |
呼び名 |
名 |
訳 |
色 |
キーワード |
| 0 |
アイン |
AIN |
無 |
|
|
| 00 |
アイン・ソフ |
AIN SOPH |
無限 |
|
|
| 000 |
アイン・ソフ・オウル |
AIN SOPH AUR |
無限光 |
|
|
| 1 |
ケテル |
KETHER |
王冠 |
白 |
根源 |
| 2 |
コクマー |
CHOKMAH |
叡智 |
灰 |
超越的父 |
| 3 |
ビナー |
BINAH |
理解 |
黒 |
超越的母 |
| 4 |
ケセド |
CHESED |
慈悲 |
青 |
建設者 |
| 5 |
ゲブラー |
GEBURAH |
力 |
赤 |
破壊者 |
| 6 |
ティファレト |
TIPHARETH |
美 |
黄金(黄) |
調停者 |
| 7 |
ネツァク |
NETZACH |
勝利 |
緑 |
感情 |
| 8 |
ホド |
HOD |
壮麗 |
オレンジ |
知性 |
| 9 |
イェソド |
YESOD |
基礎 |
紫 |
星幽光 |
| 10 |
マルクト |
MALKUTH |
王国 |
黒、黄、オリーヴ、小豆 |
物質 |
パス(小径)
セフィロトが抽象的な絶対的概念を示すのに対して、各セフィラを繋ぐパス(小径)は「文字」によって表される主観的観念である。「創造の書」によれば、それは我らの住む、この顕現した宇宙の「多様性」すべてを表す根本形態、本質とされる。これはまた、ヘブライ文字によって示される事となる。以下に、その簡単に纏めた表を示す。下表の「番号」とは樹における径の番号である。表の下には、パスの番号と、燃える剣、智恵の蛇が含まれた図を掲げておく。
| 番号 |
文字 |
声価 |
数価 |
名前 |
呼び方 |
意味 |
位置 |
| 11 |
|
A |
1 |
ALEPH |
アレフ |
雄牛 |
ケテル − コクマー |
| 12 |
|
B |
2 |
BETH |
ベス |
家 |
ケテル − ビナー |
| 13 |
|
G |
3 |
GIMEL |
ギメル |
駱駝 |
ケテル − ティファレト |
| 14 |
|
D |
4 |
DALETH |
ダレス |
扉 |
コクマー − ビナー |
| 15 |
|
H |
5 |
HEH |
ヘー |
窓 |
コクマー − ティファレト |
| 16 |
|
V |
6 |
VAV |
ヴァウ |
釘 |
コクマー − ケセド |
| 17 |
|
Z |
7 |
ZAYIN |
ザイン |
剣 |
ビナー − ティファレト |
| 18 |
|
Ch |
8 |
CHETH |
ケス |
柵 |
ビナー − ゲブラー |
| 19 |
|
T |
9 |
TETH |
テス |
蛇 |
ケセド − ゲブラー |
| 20 |
|
I、Y |
10 |
YOD |
ヨド |
手 |
ケセド − ティファレト |
| 21 |
|
K |
20 |
KAPH |
カフ |
拳 |
ケセド − ネツァク |
| 22 |
|
L |
30 |
LAMED |
ラメド |
牛追い棒 |
ゲブラー − ティファレト |
| 23 |
|
M |
40 |
MEM |
メム |
水 |
ゲブラー − ホド |
| 24 |
|
N |
50 |
NUN |
ヌン |
魚 |
ティファレト − ネツァク |
| 25 |
|
S |
60 |
SAMEKH |
サメク |
支柱 |
ティファレト − イェソド |
| 26 |
|
O |
70 |
AYIN |
アイン |
目 |
ティファレト − ホド |
| 27 |
|
Ph、P |
80 |
PEH |
ペー |
口 |
ネツァク − ホド |
| 28 |
|
Tz |
90 |
TZADDI |
ツァダイ |
釣り針 |
ネツァク − イェソド |
| 29 |
|
Q |
100 |
QOPH |
クォフ |
後頭部 |
ネツァク − マルクト |
| 30 |
|
R |
200 |
RESH |
レシュ |
頭 |
ホド − イェソド |
| 31 |
|
Sh |
300 |
SHIN |
シン |
歯 |
ホド − マルクト |
| 32 |
|
Th |
400 |
TAU |
タウ |
十字 |
イェソド − マルクト |
図2
四界
カバラの理論では、この世界は四つの世界によって構成されているとされる。それが、アツィルト(元型)界、ブリアー(創造)界、イェツィラー(形成)界、アッシャー(現実)界である。これはまた、創造の四世界とも呼ばれ、「神」が自分自身をこの世に表出せしめるに通る段階を示すともされる。初心者にはよく誤解される事だが、これらは空間的に別々に世界があるといっているのではない。これらは一つの場に連続する世界であり、重なり合って存在する世界である。この4つの世界を生命の樹上に当てはめるとき、そこには2通りの見方がある。一つは、ケテルをアツィルト、コクマーとビナーをブリアー、ケセドからイェソドをイェツィラー、マルクトをアッシャーと対応させる見方であり、もう一つの見方は一つの世界に一つの生命の樹があるとする見方である。
三組
生命の樹を全体的に見た場合、3つの三つ組とそれにぶらさがるマルクトと分けて捉えることが出来る。最初の三組は、ケテル、コクマー、ビナーによって形成され、これはその性質から至高の三組と呼ばれる。次の三組は、ケセドからティファレトによって形成される倫理的三角形。そして、最後はネツァクからイェソドによって形成される星幽的三角形である。
三つの柱
生命の樹は、その形を三本の柱に見立てる事ができる。コクマーからネツァク、ケテルからマルクト、ビナーからホドが、その柱の形である。そのうち、コクマーの通る右側の柱を「慈悲の柱」フリーメーソンにおけるヤキンの柱とされる。ビナーの通る左側の柱は「峻厳の柱」ポアズの柱とされる。そして、ケテルの通る柱は「中央の柱」とされる。
アビス(深淵)とパロケト
生命の樹上にはセフィラとセフィラの繋がりを隔てる2つの障壁がある。一つは、ティファレトと以下のセフィラを隔てる障壁であり、それは「パロケト」と呼ばれる。GDの教義ではそれは、外陣位階にあるものが内陣に入る時に通る「幕」とされる。もう一つの障壁はアビス(深淵)と呼ばれ、ビナーと以下のセフィラを隔てる。GDではそれは、個としての人間を超える時に通る大いなる深みとされ、学徒は此を渡るとき、その個としての全存在を捧げ尽くすとされる。
炎の剣と智恵の蛇
炎の剣とは神が世界を顕現させるときに使った生命の樹の序列によって形成される。また、我々の住まいし荒れた園と、至高のエデンを分け隔てる障壁となる。−「神はケルビムと燃える剣を、荒れた園と至高のエデンの間に置き、至高のエデンがアダムの堕落に巻き込まれないようにした」−。智恵の蛇とは22の小径を繋ぐ存在である。図2を参照して欲しい。燃える剣は上方から各セフィラを通って降り来る下降原理であり、智恵の蛇は下方から各パスを這い登っていく上昇原理である。
ダース
図1のビナーの下にある番号の打たれてない球体はダースと呼ばれ、他のセフィラと別格に扱われる。ダースはコクマーとビナーの早産の子と言われ、他のセフィラとは次元の違うものである。ダースはまた、象徴的に知識のセフィラとも呼ばれ、深淵を跨いだ状態になっている。
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